第7章 story7“足元に、桜色”
大きな荷物を抱えることなく、三成と彩芽は再び馬に乗り城まで戻って来た。
「遅い」
大阪城の門前で二人を待っていたのは眉間に皺を寄せた清正だった。
「あ…ただいま、清正」
「わざわざ出迎えとは随分暇なのだな」
清正を見るなり三成は盛大に溜め息をついた。
「清正…っあの、今日はおねね様がお休みを下さってね、一緒に城下に行くはずだったんだけど…おねね様に急用が出来てしまって、三成が付き合ってくれたの…っ」
何やら険悪な雰囲気を感じ取った彩芽は今朝からの経緯を清正に必死に説明した。
「私が行きたいって言ったの…」
「…もう、わかったから。夕食の給仕…今からあるんだろう?」
少しだけ不安気にしている彩芽の頭を清正が撫でる。
「うん…っ、三成、今日はありがとう。知らないものたくさん見られて楽しかった」
「…あぁ」
三成は彩芽に触れている清正の手を睨みながら短く返事をした。
じゃあ行くねと、笑って告げると彩芽は走ってその場を後にした。
「…あんまりアイツを連れ回すな」
「それは…出来ん相談だ、そもそも今日はおねね様の命だからな」
「「………」」
三成と清正の間に沈黙が訪れる。
互いに思っていることは同じだった。
((コイツは…彩芽が好きなのか…?))
結局互いにそれを確認することなく、二人は城内に戻った。