第6章 story6“ぶらり、城下町”
風車を眺める彩芽はまるで子どものようだった。
そんな彩芽を見ていると自然と口角が上がってしまう。
「あ…」
何かに気付いたように彩芽がある店を見つめていた。
でも直ぐに視線を元に戻す。
彩芽の見つめていた方向には履き物屋があった。
「………」
三成は目を細めて考え、あぁ、と納得したように言葉を発した。
「三成?」
「何でもない。彩芽、折角来たのだから何か食おう」
「あ…うんっ」
何かを考えていたような三成が気になったが、三成の提案に彩芽はすぐにそんな事は忘れてしまった。
茶店に入った二人は桜餅を注文し食べることにした。
「春の味って気がする…ふふっ」
桜餅を頬張りながら彩芽は嬉しそうに笑った。
「何だそれは…あ」
「え?」
ふと、三成は彩芽の口元に手を伸ばし親指で拭った。
「餡が…付いてた。子どもか、馬鹿…」
「ごめんって…三成っ…////」
親指で拭った餡を三成はそのまま舐める。
驚いた彩芽は赤くなり、慌てて三成の名を呼んだ。
「やはり…ここの餡は旨いな」
「…もう……////」
しれっと言いのけた三成に彩芽は頬を膨らませていた。
それから、二人は他の店も見て回った。
店に入る度に新鮮な表情をみせる彩芽を見て、三成もまた楽しんでいるようだった。
(くるくると、よく変わるものだ)
彩芽を見つめ、三成はそう思っていた。
笑う顔、驚く顔、恥じる顔。
このまま腕を引いて抱き締めたら、どんな顔を見せるのだろうか。
「もうそろそろ…日暮れだね、戻ろうか」
「…あぁ、そうだな」
振り向いた彩芽の言葉に三成は頷いた。
「彩芽、先に馬番の所へ行ってくれ。買い忘れた物がある」
「うん、…でも一緒に行こうか?」
「いや、一人で構わない。馬はわかるな?」
「うん」
彩芽を先に馬の所へ帰すと三成はある店の前まで戻って来た。
そして、買い物を済ませると急いで彩芽の所へと戻った。
「三成、早かったね」
「あぁ」
三成は短く返事をするとして馬に跨がる。
夕日で空が赤く染まる頃、二人は大阪城へと戻ったのだった。