第4章 story4“君のとなり”
「おう!今帰ったのか?!…っておまっ…!何やってんだよ!!?///」
「何がだ?」
正則は顔を赤くして清正が抱えている彩芽を指差した。
「あぁ、ここで暮らす彩芽だ。真田の姫さん」
「きっ清正様…!私は姫でも何でもありません!」
「あんだけ大事にされてんだ、姫も同然だろう」
慌てて否定した彩芽に清正は優しく微笑みかけた。
「………っ」
上田で別れた人達の顔が脳裏に浮かぶ。
昌幸様、信之様、世話をしてくれた女中さん達、気さくに話をしてくれる兵士達。
そして幸村。
「俺ァ、福島正則だ!よろしくな!」
「あ…!彩芽、です…お世話になります…!」
一瞬寂しい気持ちになった彩芽だったが、正則のそこぬけに底抜けに明るい声が彩芽を現実に戻した。
「ここを上がって左の廊下の奥かお前の部屋だ」
城内に入り、清正は彩芽を降ろす。
彩芽に用意された部屋の前まで来ると清正は襖を開け彩芽の荷物を置く。
「清正様…運んで頂いてありがとうございます、その、荷物も私も…」
「いや、着替えたら秀吉様に顔を見せに行くぞ」
「…はい!」
「それから…」
「…?」
言葉を言い掛ける清正を見上げ、彩芽は首をかしげる。
「清正で、いい」
「へ…?」
少しだけ照れた様子の清正は、彩芽から顔を逸らしてそう告げた。
彩芽はそんな清正を笑って見上げ、はい、と答えたのだった。