第3章 story3“新しい出逢い”
清正は躊躇いながらも彩芽をそっと抱き締めた。
彩芽が拒まないことを確認すると抱き締める腕に少し力を入れる。
「…迎えに行くの、早過ぎたか……?」
「……いいえ…早い方が、良いと思っていました…」
腕の中で彩芽は小さく首を振った。
「……清正様、少し辺りを見させて下さい」
「辺りを?」
「上田を…大好きな上田の景色を覚えておきたいの……」
清正を見上げ、彩芽はそっと微笑んだ。
目尻には涙がある。
本当はまだ泣いていたいのだろう。
でもそれを、彩芽はしない。
そんな彩芽に清正は少し惹かれていた。
「いい処だな…」
「…はい、冬は寒いですけどね」
「…大阪も良い処だ、きっと好きになれる」
「…はい」
清正の言葉に彩芽は満面の笑みを浮かべた。
「……////…アイツが必死になるのも、わかる気がするな…」
「清正様?何か言いましたか…?」
「いや、何も」
「?」
上田の景色を暫く見つめた二人はまた馬を走らせた。
涙はもう止まっていた。
私がいつまでも泣いていたら幸村は安心出来ない。
そう言い聞かせた彩芽は真っ直ぐに前を見つめていた。