第23章 戦国四重奏外伝 “同じ体温”
きゅうっと胸が締め付けられる。
でもその場で彩芽は幸村に何も言えなかった。
そのまま時は無常にも過ぎて、夜は更けていく。
「じゃあ彩芽殿、私は廊下にいますので何かあったら呼んで下さい」
「………幸村っ」
「…?、はい」
部屋の外へ出て行こうとする幸村を彩芽は引き止める。
「……あの、あのねっ」
呼び止めたものの、後に言葉が続かない。
何を言うのが正解なのか。
同じ部屋で過ごす事が嫌なわけじゃない。
幸村となら、と思う自分も確かにいるのだから。
言葉を探して目を泳がせる彩芽の前に幸村は膝をついて目線を合わせた。
「彩芽殿…焦らずともいいのです、彩芽殿は彩芽殿の速さで歩みましょう」
「幸村…」
「彩芽…私の事が好きですか?」
幸村に時折こうして呼び捨てで呼ばれると胸が高鳴る。
そして溢れる想いに気付かされる。
「好き…幸村、好き」
涙を浮かべ、彩芽は震える声でそう告げた。
「私もです、今はそれだけで私は幸せですから」
幸村はそっと彩芽の頭を撫でた。
幸村の笑顔を見て、彩芽は涙を拭って口を開いた。
「…幸村、一緒に寝よう」
「しかし彩芽殿…!」
「…私、幸村と一緒にいたい」
「彩芽殿…」
顔を見合わせ二人で微笑み合う。
先程までの張り詰めた空気は消え、柔らかい空気が部屋に溢れていた。
布団を二組並べて敷して潜り込む。
旅の疲れもあって睡魔はすぐにやってきた。
「っしゅん…!」
「…彩芽殿、寒いですか?」
「うん…でも少しだけだから慣れれば大丈夫」
昼間は暖かいが夜はまだ冷える。
幸村は自分の布団の端を捲り彩芽に声を掛けた。
「こちらに来ますか?」
「えっ…」
「あ…いや、変な意味ではなく……温まれればと思って…」
意外な申し出に少し戸惑ったが彩芽はゆっくりと体を起こし幸村の元へ向かう。
「あの…お邪魔します……///」
「はい」
布団に入った彩芽の体温に幸村は驚いた。
「彩芽殿!体冷えきってますよ!?」
「そうかなぁ…?」
自覚のない彩芽に幸村は小さく溜め息を溢した。