第14章 なくした傘
外を見ること長時間
どのくらい窓にへばりついていたのでしょう
「お腹がすきました」
一人でそうつぶやいた言葉が
シーンとした部屋に寂しく消えた
久野瀬さんがいなくなったあの日のように
一人ぼっちを感じました。
「あ…」
ご飯なんて作ったこともないな
どうしよう
それにここからは出てはいけないし
「うーん…」
おとなしく待つしかありませんね
私は立ち上がり、ベッドに戻ると
大きく深呼吸しました
心臓がドクドクとうるさいです
まだ落ち着いてないのか
苦しいです
ガチャ
「あ」
「なに」
「おかえりなさい」
「…ただいま」
「…?」
寂しくてお腹がすいていた絶好のタイミングで神威さんは帰ってきてくれました。
余りにもタイミングがよかったから
間抜けな声を上げた私に神威さんはじと目でなに。といいます
その後お帰りなさいと言うと
少し目を大きくして返事をしてくれました
何かに驚いたように
真っ直ぐにしか見えないから
私は必死に神威さんを目で追います
「お腹空いてないかい?」
「え?」
「え?じゃない。聞いてるんだけど」
「あ…すいてます」
「そ、じゃあついてきて」
そう言うと神威さんは背中を向け
部屋から出ます
早くて追えなくて、音で判断しました
「あっ…」
まってください
「…」
「っきゃ」
体を動かすと何かにぶつかってこけてしまいました
「…」
いたいです
「何してんの、ばか」
「すっすみません」
「別に」
短いその言葉の後に
私の体は浮かびます。さっきと同じです
「わっ」
「やっぱこっちのが早いね」
「ごめんなさい…」
「…」
揺れる視界に目を閉じて
どこかに連れて行かれます。