第12章 おいてきた傘
「……」
「よし、これでいいだろう」
「ありがとうございます」
少し落ち着いたのか女は笑うと、ペコッと頭を下げた
「そういえばオメェさんの名前聞いてねぇな、何ていうんだ」
「です」
「へぇ、俺は阿伏兎だ。よろしくな」
「阿伏兎さん…はい」
「まぁそんな落ち込みなさんな、別れは団長が言ってくれるんだしよ」
「……はい、あ。あの人はなんて名前なんですか?」
「あぁ、神威だぜ」
「神威さん…」
治療を終えると、怪我した腕に手を置き俯いてる。
そんなんじゃ団長に殺されるぜ
別れは俺が言ってくるなんて場所も知らねぇくせに
は気づいてねぇみてえだが団長は別れなんか言うつもりはじめからねぇだろうよ、少し時間を潰して帰ってくるんだろう。
それによ、誘拐したやつの知り合いに
「今から誘拐させてね」なんていう馬鹿いねぇだろう
「ただいま」
シーンとしていると、のんきな声が聞こえた。
また随分早いお帰りで
「おう、団長おかえり」
振り返ると、いつも通りのニコニコ笑顔の団長がそこにいた。