第4章 キッドとの出会い
…教室に戻り、午後の授業を受け……放課後。
真鈴はクラブに入っていないため、自由な時間になる。
ミシュアはバレー部だ。
あぁ見えて、将来を期待されているルーキーなのだ。
「ん〜……そろそろ…描くか…」
誰もいなくなった教室で一人呟いた。
鞄の中から真っ黒なファイルと黒い筆箱のようなものを取り出した。
中身はというとー…
「よっしゃ、描く‼︎」
…スケッチブックと大量のコピックだった。
真鈴はイラストを描くことが大好きなのだ。
学校の休み時間でも授業中でも、いつでもアイデアを考えている。
教室は休み時間に下書きをした、楽しく談笑しているクラスメートのイラストを描こうとしていた。
…静かな教室にペンを走らす音だけが響き渡る。
……数十分後、誰かが教室に入ってきた。
が、真鈴は集中していた(配色を変えていた)ため、そのことに気がつかない。
その人物は真鈴を見つけるなり、こちらに近づいてきた。
「……うわ、上手ェなお前‼︎」
「ーっきゃあああああああ‼︎‼︎⁉︎」
いきなり目の前にある人物が現れたため、驚いて悲鳴をあげてしまった。
「う…うるせ……気がつかなかったのかよ」
「ま、ままま全く…」
…目の前に立っていたのは。
「ユースタス…」
お昼休みに会った、ユースタス・キャプテン・キッドだった。
「おい、キッドでいいぞ。」
「じゃあそーする。私のことも呼び捨てで構わないから。」
「おう。…ってお前、何隠してんだよ、もったいねェ」
「…勝手に見るな」
「見ちまったものはしょうがねェだろうが。…もっかい見せろ。今の絵、このクラスの奴らだろ?」
「っ‼︎」
(何の絵か分かるぐらい見たのか…⁉︎)
ミシュア以外の人にイラストを見られたのは初めてだ。
頭の中が軽くパニック状態になっている。
固まっている間に、キッドにスケッチブックを取られた。
「ちょっ‼︎ 返し…っ‼︎」
「取れるもんなら取ってみやがれっ‼︎ …うぉ…すげェ…‼︎」
「ーっ‼︎ っ‼︎」
キッドの方が身長がバカでかいので、スケッチブックを持ち上げられては、もう真鈴に成すべき手がない。
…ようするに、届かないのだ。
「早くっ…返して‼︎」
「なんだよ、もう少し見させ…っててて‼︎」
ちょうどの高さにあったキッドの胸元を叩く。