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HQ‼︎ Language of love《短編集》R18

第7章 こっちを見てよ《及川 徹》


「あー、日直って大変!嫌になるよね、ちゃん」

夕陽が沈む教室で、俺は大好きなこの子に嘘をつく。
「早く部活行きたいのに、岩ちゃんに及川さん怒られちゃうよ」
本当は少しでもこの子といたいくせに。
ふふ、とこんな俺の話にも笑ってくれるちゃん。

肩より少し長い綺麗な黒髪を揺らしながら、黒板を一生懸命に消して日付を変えるちゃん。
そんな彼女にふと尋ねた。

「ねぇ、ちゃんの名前の漢字、どういう字?黒板に書いてよ」
学級日誌の今日の日直の欄。勿論彼女の名前の漢字など知っているのだけれども。少しでも長く一緒にいたい時間稼ぎだ。

彼女は俺の手元の日誌を一瞥して、察したらしく、小気味良いチョークの音を立てて自身の名前を黒板に記した。とても丁寧で綺麗な字体で。

「じゃあさ、俺のも書いてよ。及川徹、って」
「いいけど、どうして」

ちゃんの字が綺麗だから、先生みたい。と言うと、何それ、と小さく笑いながらも承諾してくれた。

「及川 徹」

バレー部の仲間にも友達にも、幾度となく呼ばれた名前が特別に感じられた。ちゃんが書いたというだけで。

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