HQ‼︎ Language of love《短編集》R18
第6章 40センチ ≪月島 蛍≫
「ごめん、蛍くん。今、何て?」
昼休みに幼馴染みの蛍くんから廊下に呼ばれて掛けられた言葉は私の理解を越えていた。
「‥だから、山口が彼女と初めて出掛けるのに緊張するからって、僕についてこいって。に彼女役頼んでるんでしょ」
突然の申し出に頭がついていかない。私と、蛍くんが付き合う…?
「えぇ!?そ、それではWデートということでありますか!」
「そうだけど。何で敬語」
「いやいや、でも私と蛍くんじゃ兄妹にしか見えないんじゃないかなー」
私は頭ひとつ分以上、150センチあるかないかの私の遥か上にある彼の顔を見上げて言った。
「こんなこと、にしか頼めないから、頼んでるんでしょ。いいから次の日曜空けといてよね」
じゃ、と颯爽と去っていく彼の背中を見て私は廊下で立ち尽くしていた。
‥一日だけの偽りのデート。小さい頃から憧れていた蛍くんの隣にたった一日だけど並べること。例え一生彼の一番にはなれなくても、ほんの一日だけ、蛍くんの“彼女”だ、って、自惚れてもいいのかな…。