HQ‼︎ Language of love《短編集》R18
第5章 春に焦がれて《澤村 大地》
私の頭一つ分上にある彼の耳は寒さのせいか、なんなのか、少し赤くなっていた。
「‥今日はさ、我慢出来なくて待ってたんだ」
そう言って、私の好きな笑顔ではにかむ。
「‥ありがとう」
その瞬間、降り注いだキスは二人とも唇が冷たくて、でも心はぽかぽかした。
「やっぱり、鞄自分で持つ」
「え、いいって」
「その代わり‥、手、繋いでもいいですか‥」
春になったら、あれがしたい、あそこに行きたい、そんな話をしながら歩く帰路は、少しだけ暖かい。