HQ‼︎ Language of love《短編集》R18
第29章 憧れと《田中 龍之介》
さんが俺を見て言う。
‥流石、大人というか、こんなことを聞いても顔色ひとつ揺るがない。
俺はといえば今にも顔から火が吹き出そうだ。
「‥いないっす」
「えー?ほんとかなぁ、龍大人気なんじゃない?」
「全然あり得ないっすね。悲しいくらいに。‥さんは‥その、彼氏とか」
「いないよ、‥私にも、龍みたいな彼氏が出来たら良かったのにね」
バス停はすぐ目の前。別れの時はすぐそこに迫っている。ここで思いを伝えることが、ベストなのか否か。ぐるぐると頭を巡る。
「さん!!」
大きな声で名前を呼んで。驚いた顔の彼女。
それでも今、思いを伝えるなら今しかないんだ、そう心を決めた。
「俺は、さんが好きなんです。もう憧れだけじゃない。」
「‥ありがとう、龍」
それは、二人の影が、重なった瞬間。
おしまい