HQ‼︎ Language of love《短編集》R18
第29章 憧れと《田中 龍之介》
「‥ただいまー」
休日練習を終え、自宅の鍵を開けて入る。
玄関先には姉貴の車があったから、姉貴は家にいるのだろう。
「おっかえり、龍」
「あ‥うす、‥て、さんすか!?」
目の前には、わずかに昔の面影がある女性の姿。ひらひらと手を振りながら俺に笑いかけている。
「大きくなったなぁー、龍。もう身長とっくに越されちゃったね」
ぽんぽん、と背伸びして俺の坊主頭を撫でるさん。
「何でこっち来てるんですか、いつぶりですか」
「ちょっとね、用事があって来たから久しぶりに冴子にも会いに。‥私が高校生の時に引っ越してからだからもうずっとこっちには来てなかったかもね」
「そうっすね‥」
さんは、姉貴の同級生で中学卒業と同時に東京の高校に進学した。
当時はよく俺の家に遊びに来ていて、俺もよくしてもらっていた。
‥俺はその時からずっとさんが好きだったんだ。
「龍、ちょうどいいや。あたし今から急用でさ、悪いんだけどことバス停まで送ってってよ」
姉貴の提案に、即座に了承した。