HQ‼︎ Language of love《短編集》R18
第26章 Xmasは誰と《赤葦 京治》
「こんにちは、さん」
「あ、京治くんだ。こんにちは」
俺は図書館を訪れ、いつもの特等席である窓際の席へと向かい、見慣れた後ろ姿に声をかけた。
「今日は何を読んでるんですか」
「今日はね、これ。この映画シリーズ好きなんだ」
「それ、今最新作が上映してるやつですね」
さんは俺の通う梟谷学園の近隣にある女子高に通っていて、2校の間に位置するこの図書館で出会った。
初めて見た日から、俺はさんが気になっていた。
窓際で真剣な眼差しで本を食い入るように見つめる姿、本の世界にまるごと身を置いているような雰囲気に、一瞬で目を奪われ、その日以来その窓際の席は俺にとっても特等席となった。
そして俺は彼女との時間を過ごすなかで、じわじわと距離を縮め、先日、遂にさんの彼氏になることができた。
関係は変わっても、此処で過ごす時間に目新しい変化はない。相も変わらずさんは本の世界に夢中だし、俺は本を読むふりをして、彼女を横目で見つめる日々だ。
さんは俺の事を本当はどう思っているのだろうか。