HQ‼︎ Language of love《短編集》R18
第4章 ✴︎恋に酔う≪黒尾鉄朗≫
金曜日の午後8時。花の金曜日、サービス残業を終えて待ち合わせの予定場所の新橋に向かう。
メイク直す時間もないし、このまま向かおう。社会人になってようやく一年。目まぐるしい毎日でも気がつけば時は過ぎているもので。
以前はもっと頻繁に会っていた彼とも就職してからは初めて会う。
「久しぶり、鉄郎」
「おお、か、早かったな」
待ち合わせ場所に着けば、もう黒尾鉄郎は着いていた。見慣れないスーツ姿でスマートフォンを弄りながら。
「待たせて悪かったわね、まだ時間前なのに」
「ああ、ちょうど近くで商談があったからな」
彼はそう言うけれど、昔から彼は待ち合わせには気を使うタイプだ。飄々として気が遣える、まさに営業向きだ。
「立ち話もなんだから店、入ろうぜ」
駅前のざわつくところから少しだけ離れたところ、小洒落た居酒屋風のレストランが、今夜彼の用意した店だった。
「とりあえず、乾杯」
「ん、乾杯」
心地いいグラスの重なりあう音を合図に、二人は仕事のこと、懐かしい高校時代のこと、かつてのチームメイトのことを話した。
青春時代を共にバレー部の選手とマネージャーとして過ごしただけあり、鉄郎との時間は落ち着く。彼もそれは同じらしく、
「と居ると落ち着く」
との旨を何度か口にした。余程疲れていたのか酔いも早い気がする。
「もうちょい、飲みに行こう」