HQ‼︎ Language of love《短編集》R18
第22章 もう一度君の姿を《天童 覚》(雨鳥 mg.さんリク)
それから彼女は、ぽつり、ぽつりと語り出した。
「よくあることだとは分かってます、でも私にとっては初恋だったから‥。なかなか踏ん切りがつかなくて、なんとなく此処に居て。‥そしたら、貴方が声をかけてくれたんです。」
話ながら、彼女は手袋もしていない赤くなった手を握りしめていた。
「でも、話聞いてもらったら、少し楽になりました。ありがとうございました」
そう言って、鼻の頭まで赤らんだ顔で笑みを浮かべた。
「そ、なら良かった。もう寒いから帰ろう。」
俺が立ち上がると、俺の差していた、今まで二人の体を被っていた傘の部分だけが、地面に雪の窪みを造っていた。
「あの、お金返します!ちょっと待ってください」
「いいよ、俺が勝手にあげたんだし」
でも、と戸惑っている彼女に提案した。
「じゃあ、今は受け取らない。今度学校まで届けに来てよ、俺は白鳥沢学園のバレー部、天童覚。それでいい?て言うか、申し訳無いと思うなら俺に会いに来て?」
「‥わかりました。私はです、今度、天童くんに会いに行きます。」
「イイ子だねぇー、じゃあね、ちゃん。気を付けて帰ってよ」
ちゃんは深々と礼をして、俺を見送ってくれた。
次に君が俺に会いに来たときには、何処かに連れていこうかな、なんてらしくないことを考えた、ある寒い日の夕暮れの出来事。
おしまい