第25章 last
嘉宗の日記を握り締める。
何も書かれていない空白のページには、一体どんな物語が書かれていたのだろうか。
そんなことを思いながら、私は目を閉じた。
(私は過去も、今も…かけがえのない素晴らしい仲間に囲まれて…すごく幸せだった。慶、純可、楓我、大破…こんな私をずっと好きでいてくれてありがとう…阿近さん、私と一緒に居てくれてありがとう…最期になっちゃった。)
閉じた目から涙が溢れ出す。
意識が朦朧として、薄れていく。
かすかに残った聴力で、懐かしい声を捉えた。
温かい気持ちでゆっくりと瞼を上げると、その声の主達が私の目に映った。
「もぉー!嘉宗早く隊長起こしてきてや!」
「任務に遅刻しちまうぜ?」
「いや…少しぐらいは皆さんが行って下さいよ…。」
「全く…こうなったらジャンケンで決めんで!最初はぐー、ジャンケン…」
「なんで僕はこういう時に必ず負けるんですか…。」
「それがあんたの運命やからや!ほら、行ってきー!」
木にもたれかかって眠りについた私の目には、眠りにつく前と同じ緑に囲まれた景色が映っていて、目の前には輪になって話すあの四人の姿がハッキリと見えていた。
(皆…迎えに来てくれたんだね…。)
嘉宗がスッと立ち上がり、後ろを振り向く。