第23章 rise
楓我の母が零番隊を去り、隊首室では私と楓我が話をしていた。
「隊長、本当にもう大丈夫なんですか?」
「ええ。痛いところなんて無いわよ。…それで、さっきの楓我の話、私に聞かせるために呼び止めたでしょ。」
「悟るの早いですよ…隊長に、思い出してもらいたかったんです。」
悲しみに揺れる目が私を見る。
「きっと隊長も、俺と同じ気持ちで死神になったはずだって思ったから…。」
「…はぁ。いつから私の過去の気持ちを予想してたの。」
「初めて隊長に会った時です。虚に立ち向かう隊長が、凄くカッコよかったんです。虚と戦って死ぬかもしれないのに、どうして生き生きと戦えるのか不思議だったんです。でも、俺も死神になってからその疑問の答えが解ったんです。」
「…私も夢だった死神になれて、すごく幸せだった。でも幸せがあまりに近すぎて見えなくなっちゃってたのね…。」
そうだ。私は確かに、幸せだった。
たくさんの仲間に囲まれて、いつも笑っていた。
「…ありがとう。」
「へ…!?隊長…」
私が素直になったのが珍しいようで、楓我が目を見開いた。
「…って、総隊長から隊長が戻ってきたら一番隊へ行くよう言っといてって言われてたの忘れてた!」
思い出すのがあまりにも急すぎて私も少し驚いたが、それよりも一番隊へ行く方が先だと知らぬ間に頭が切り替わる。
「…ぁあ…わかった。」