第21章 please
「彩李…話して。」
小刻みに震える血塗れの彩李の手をそっと握りしめると、フッと力が抜けていく小さな体。
目尻から流れ出る涙を拭ってやりながら、嗚咽混じりに声を絞り出す喉元に耳を傾けた。
「わ、たしっ、の…ヒグッ…記憶ぅ、をっ…受け取ってっ…。」
それだけ言うと目を閉じて右手を宙に漂わせる彩李。
何かを探して空気を掴む手に私から温もりを差しのべた。
そして私の体に異変が起こり出す。
体が羽のように軽く感じ、意識が少しずつ肉体から分離していく様な感覚に神経が支配される。
更にエスカレートしていく異様な感覚に怖じ気づいてじっとしていたのが、ほんの数十秒前の出来事。
私は…知らない場所に立っていた。
(ここは…王族邸?まさか…)
さっき彩李が言っていたのはこういう事かと自己解釈を肯定する。
もちろん絶対では無かったが、そう思わせるには十分過ぎるくらい条件が整っていた。
これが、彩李の言っていた記憶に違いない、と。
私は辺りを見渡して、彩李が伝えたいことは何なのかを探すことにした。