第18章 mirror
「雲雀…王族の力がここまでとは…。」
総隊長は初めて見る破道の番なし詠唱破棄に釘付けとなった。
他の意識がある者はただ呆気にとられた。あれほど爆発的な威力を持つ破道を、術名だけで生み出している。自分達との力の違いをまんまと見せつけられているようだった。
自分達は雲雀の結界の中にいて、外の様子は目でしか分からないが、外に出れば巻き込まれて死んでしまうだろうと容易に想像できた。
霊圧を腕に纏わせ、ファントムを斬るその姿は美しい舞を見ているかのようで、見ている者は息をすることすらも忘れていた。
「結界と同調すれば抜けられるはず…!」
しかし慶は結界の中にずっといる事を嫌がり、純可を地面にゆっくりと寝かせ、自身の霊力を調節して結界の外に出ようと考え手を前に伸ばした。
目を閉じ、結界の霊力と自分の霊力を合わせていく…。
あと少し…あと少しで…と目の前の道が見えてきた時、慶の手を何者かが掴み、阻止した。
「誰っ…!?」
驚き上ずった声で叫んだ慶を見る、青い目。
『雲雀が僕に君達を守るよう命じたんだ。だから君を外に出すことはできない。君も零番隊なんだから隊長の言う事には従わなければならないんだろう?』
「あなたは…隊長の…」
純可は目だけを動かしてその男を見た。
『姿を見せるのは初めましてだね。艶斬と言います。』