第4章 past
-これは、私が事件に巻き込まれるまでの記憶-
最も権力の強い王族の娘として生まれた幼い私は、
家の庭で母の膝の上に乗せてもらい、空を眺めながら会話を楽しんでいた。
「…死神?」
「そう。瀞霊廷でお仕事している人たちよ。
お母さんも昔はそこにいたの。」
「へー!じゃあお母さん凄いの!?」
「うーん・・・内緒。」
「何で?」
「恥ずかしいから嫌だ。」
「えー教えてよー」
知りたいのに言ってくれないので拗ねたように頬をプクりと膨らませてみた。
母は膨れた私を見て声を殺しながらそっぽを向いて笑う。
そんな風に笑われるとなんだか恥ずかしくなってきて、顔を元に戻した。
母も落ち着き、また同じ事を訊こうとした時、
思いついた様に母が口を開いた。
「雲雀も死神になってみたらわかるんじゃないの?」
「私もなれるの!?」
「もちろん。ただ、真央霊術院で勉強する必要があるけどね。…はぁ、懐かしいなぁ・・・皆今頃何してるのかな。」
「お母さんお友達いるの?」
「友達というか…知り合いというか…一番印象に残ってるのは冬獅郎君かな。
私が流魂街に行った時に会ったの。
白い髪の毛で、綺麗な目をした小さな男の子よ。」
(白い髪の毛・・・?おじいさん?)
母が君をつけて呼ぶのだから年下のはず。
だけど白髪という部分が引っかかり、軽くパニックになった。
「会える?」
「多分会えると思うよ。そのためにはまず瀞霊廷に行かないとね。」
可能性があるならやるだけやってみよう。
「お母さん!私死神になる!」
「何だ?お前も死神になりたいのか?」
「ぅわっ!お父さん!」
いつの間に現れたのか、私の父が後ろに立っていた。