第12章 star
私は隠密機動によって四十六室まで連れていかれ、すぐに法廷で裁かれる事を聞かされた。
どうせ裁判が覆ることは無いのだろう。
私は六人の裁判官達の前でも何も話さなかった。
それをいい事に、六人は勝手な話をでっち上げて法廷の場を盛り上げる。
「殺害された者の傷と瀬越雲雀の斬魄刀の形状が一致した。
霊圧も検出された。被告人には強い殺意があったのではないのか。」
「…。」
「それについては零番隊との不仲説があります。」
「どうやら零番隊の方向性の違いから、仕事以外の場面で口論になっていたようだな。」
「しかしなぜ王族まで殺した?」
「…。」
「零番隊は王属特務で霊王の命令にも従わなければならない。
夔竜は王族として零番隊に任務を任せていたが、それが厄介だったのだろう。」
…信用できるのは、私だけ。
あちらこちらから飛び交う根も葉もない話に耳なんて貸さなかった。ただ考えていた。
この事件が周りの人の記憶から消えかかった頃。その時が私が動くべき時だ。必ず私が死んだ皆の無念を晴らす。
爪が食い込んで血が出る程握り締めた拳に誓った。
そして、私が夔竜であることはまだバラさないでおこう。
もしここで私が王族だと言ってしまえば、こいつらは頭を床に潜り込ませるくらいの勢いで土下座しだすに違いない。
何よりも事件の裏で何が起きているのかを知るためには、時間が必要であり、こんな序盤で急展開を迎えさせてしまえば何も掴めないまま終わってしまう。
私はある青年が声を発するまでずっと上の空でそんな事を考えていた。