第11章 crown
「どうせ上辺だけの関係だったんですよ。自分の都合に合わなければ誰であっても捨てる…だったら私を連行する事ぐらい簡単でしょ。」
そう言う私の足元に、穢れない輝きを放つ雫が堕ちている事に私は気が付かなかった。
まだ素直で純粋で透明な心の破片が涙となって、
一粒一粒、少しずつ…私の中から消滅していった。
「何を躊躇ってるんですか?ほら…早く連れてってくださいよ。」
抗う気力はことごとく粉砕され、それを見て砕蜂は苦しそうに目を伏せ、私を捕えていた縛道を解いた。
私を縛り付けていた白い光がゆっくりと空気に溶けてゆくのを、
私の目は滲んだまま捉えていなかった…。
体がふっと軽くなった時にはいつの間に近くに居たのか、涅が私の手首に私が逃げられないよう、特殊リングを装着していた。
(この腕輪…ああ…できてたんだ…。)
私の右の手首で黄金色の光を放つ腕輪…
それは私と涅とで一緒に開発していた、霊圧制御装置の応用品。
霊圧を完全に抑え、身体的にも精神的にも自由を奪う。
だけど思うように開発が上手くいかなくて…
私がいない間に完成させてくれていたんだと今知った。
「できれば、もっと別の形で披露したかったのだがネ…。」
いつもニヤッとしている涅が珍しく笑っていなかった。
私の中には、優秀な部下だと言ってくれた時のあの喜びさえ無くなってしまったのだ。
生まれて初めて味わった絶望。
初めて聴こえた心が壊れる音。
「ごめんなさい。」
私の口から、知らず知らずにそんな言葉が漏れていた。