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陰陽の道≒式神との道

第7章 大人な狡猾-ひよこ豆-


魔滅一族にあって、永き歳月を渡る彼は、帝都の外れに一人庵を結び、侘び住まいをしている。

一族の長としての務めは大豆に任せ、彼は時にその相談役として…一族の知恵と記憶を担う者として、仲間達から“長老”と称されていた。

既に数千という年月を重ねた彼は、見目こそ青年の姿形であるものの、身の内の老齢は如何ともしがたいと、一族の者は皆、その身の健康と更なる長寿を願ってやまない。

若い彼らにとって、“長老”とは、“長”とは異なる意味での心の支柱の一つなのだろう。

そんな彼を訪ねる者といえば、もっぱら一族の者以外はありえず、招かれざる者であるならば、目には見えぬ強力な結界によって行く手を阻まれ、尚も引かぬ者は強かな逆撃を被ることとなる。

だが、そんな中にあって先頃、一族以外の訪問者が、度々彼を訪ねるようになっていた。

その者の名は…○○という。
うら若い…ひよこ豆からすれば未だ幼くも見える、少女の陰陽師である。

魔滅一族の長、大豆が彼女を認め、その式神となったことで、今では魔滅一族全てが彼女の式神として助力する約定を交わしている。
そしてそれは、長老たる彼も例外ではない。

ひとたび事が起こり、少女によって召喚されれば、ひよこ豆もこれに応じるが定めであり、彼自身、それを厭うつもりもなかった。
とはいえ、ひよこ豆は殊更に自ら前へ出ることはしない。

「一族は大豆の下に纏まっている。私が出るまでもあるまい」

そう呟く声もまた、容姿同様、若々しい張りに満ち、しかし落ち着いた風格が漂うのは、重ねた年月の重さだろうか。

そうして窓辺に寄り添いながら嘯く様は、あたかも庵にいるのは彼一人であるかのように思われるが、実のところ、そこにはもう一人、可愛らしい…と言えば恐らく『子供扱いしないでください』と拗ねるに違いない少女…○○が先刻より訪れ、既に定位置と化した場所に、のんびりと腰を落ち着けている。

その様はとても打ち解けた、ひよこ豆にとっては庵の内にあって然るべきとでもばかりのように思われるほどだ。
それはとりもなおさず、○○が頻繁に彼の元を訪れている証でもある。

永きを生きる彼の知恵…記憶、知識、それらの一端なりと教えを乞いたいと、少女が願い出、彼が求めに応じたのは、いつだったか。
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