第5章 蕩ける華-地獄鬼-
鮮烈すぎる初めての体験に意識を飛ばしたまま寝入ってしまった○○は、やがて地獄鬼の腕の中で目を覚ました。
「ぁ……っ」
地獄鬼との出来事を思い出した○○は恥ずかしくて身を捩ったが、地獄鬼の腕は解けない。
何より、身体が思うように動かなかった。
「逃げるなと言っただろうが。それに、もうお前は、俺のもんだ」
「私は、物じゃない」
この期に及んでこんなことを言っても説得力の欠片もない、かもしれない、とは○○も思ったが、やはり、これが○○の性情というものなのだ。
そして、そんなものならとうに知り抜いている地獄鬼は、にやり、と笑う。
その男臭い笑みに、○○は真っ赤になる自分を何故か止められなかった。
(地獄鬼が笑うところなんて、何度も見てるのにっ)
それなのに、何だか意識して、目が離せなくて、でも恥ずかしいから直視もできなくて。
(私…私は……)
「お前は確かに物なんかじゃねーよ。そんな風に思ってもいねえ。けど、お前は俺のもんだ」
俯く○○の頭を、地獄鬼が懐に引き寄せる。
それだけで、○○は沸騰してしまいそうだった。
昨夜はもっと凄いことを色々されたのに…なんてことは、当然頭に浮かばない。
ばくばくする心臓の音が、どうか地獄鬼に伝わりませんようにと願うばかりの少女を抱き締めた鬼が、照れくさそうに笑う気配がした。
「俺のものだ。で、俺も…お前のもんだ。それで、良いだろ」
「…………」
同じようなことを、昨夜も言われた気がする。
○○は思わず顔を上げ、図らずもぶつかってしまった視線に真っ赤になった顔を隠そうと、再び俯こうとしたが。
「こら、隠すんじゃねえよ」
「ぁっ」
「それも俺のなんだからな」
「え…ゃっ」
熟れた頬をぺろりと舐められ、○○はもう、心臓が壊れそうだ。
でも、そんな心地を味わって初めて…今更だし、本当に嫌なら、どんな目に遭わされたとしても、昨夜、あんな風に彼に抱かれたりしなかっただろうけれど…なんて、今更…というより、ようやく、○○は自覚した。