第2章 Where am I?
「古本屋さん…?」
私は逢坂くんに連れられて、商店街の外れにある古書店にやってきた。
「うん。休日や放課後…時間があるときはここに来るんだ。古書は一期一会だからね」
逢坂くんが優しく微笑む。素敵…。
「わたしも本は好きだよ。でも同じものばかり読んでるから詳しいわけじゃないけど。
逢坂くんのお勧めは何?」
「ふむ…。ナコちゃん、普段はどんな作家のものを読んでいるの?」
「えっとねぇ、わたしは…」
……
古本屋さんの後は臨海公園のベンチに座っておしゃべり。
「楽しかったよ。古本屋さん」
「えっ、本当? よかった」
逢坂くんが嬉しそうに微笑む。
「うん。わたし、学校の昼休みも、お弁当の後は図書館で1人で過ごすのが好きだし。
あんなふうに本が並んでいる所って落ち着く」
「そっかぁ…。僕も同じだよ。
あ、でも、昼休みに1人で過ごす時間を邪魔してしまったかな…?
屋上に誘ったりして…」
逢坂くんが少し心配そうな顔をする。
「ううん…。一緒に過ごせて嬉しかった。今も…」
あっ、私また。今度はこんなにはっきりと…。恥ずかしい…。
逢坂くんの顔が赤くなった気がする。夕焼けのせいかな…。
「ねぇねぇ。綺麗な夕焼けだね」
私は話をそらして誤魔化す。
彼が空を眺めてふっと微笑む。
「ああ。昼と夜が交わる黄昏時は世界が美しく見える時間だね」
素敵…。
私は思わず彼の横顔に見惚れる。
視線に気づいた彼が私の目を見る。
すごく恥ずかしいけど…なぜか目を離せない…。
「ナコちゃんも…。夕焼けに照らされて、とても綺麗だ…」
彼の右手が優しくそっと私の頬に触れる。
私は目を閉じる。
彼の唇と私の唇が触れた。
黄昏時の臨海公園で私たちはファーストキスした。
なんて素敵なんだろう。
私が楽しいことはクラブとかカラオケよりも、古書店や公園。
私の好きな人は逢坂くんなんだ。