第1章 今宵見る桃色に
「なつさん?なつさん!失礼しますよ!」
女性の部屋を勝手に開けるのは不躾だと思いましたが緊急事態なら仕方ないと音が鳴り響くほど障子を勢いよく開けた
そこに見たのは布団の上に座り泣いている彼女
部屋に誰も入った形跡はなく変わった様子もない
けれど彼女は泣いている
よく分からないまま近づけば怖い夢でも見たのかもしれないと彼女の頭を撫でる
「大丈夫ですか?」
「き、菊さん…良かった…良かった!」
顔を覗き込むといきなり涙眼の顔を更にくしゃくしゃにしながら飛びついてきた
正直、外国人のようなスキンシップには慣れていない私
いくらなつさんとはいえ、恥ずかしい
顔が火照るのが分かるが、この状況で無理矢理離すことなど出来ず背中をぽんぽんと叩く
しばらく泣き続けた彼女は、しばらくすると安心したようで夢の話をし出した
「なるほど…そんな夢を……」
「こ、怖かった…日本が戦争に負けて…菊さんが…」
思い出して再び震え始めた彼女
ですが、その話は私が経験した過去の話で正直言って、とても驚いた
何故だろうとよくよく考えて見るとピンとくることがあった
初めて会った時から懐かしい感じがしたのはこれだったのかとしっくりくる
「ふふ…それはきっと前世の貴女と私、ではないでしょうか?」
「えっ…そ、そうかな…」
「えぇ、私にはそれ以外考えられません」
あの後、彼女の叫び声が聞こえてきた
彼女がふらふらと歩いてきて、まだ微かに意識のある私に言った
『来世で貴方を探します』
そうして彼女もいなくなってしまった
けれど、私はずっと感じていた彼女と再び会うことを
また巡り会えた
こんなに幸福なことがあっていいのかとさえ思ってしまう
「でも、日本が戦争に負けるなんて……私…」
「あの時、戦争に負けていなければ今でも江戸時代のような暮らしをしていたかもしれませんよ?
だから、負けて正解だったんです」
「えっ!そ、それはちょっと嫌だけど……」
くるくると表情を変える彼女
見ていて飽きません
約束を覚えていてくれたのですね
感謝しなければ
そういえば、この前フランスさんが女性が言われて喜ぶ言葉について教えていただいたのですが…
現代の言葉は難しいです
でも、日本男児としてここで負けてはいられません