第1章 起
小学校高学年にもなれば明日の持ち物や
学校からの配布物、連絡事項等、自分で分かるようにもなるが
低学年の私にはただ学校へ行って帰ってくるという
毎日だったので担任に怒られているのも何が何だか分からなかったのだ。
担任は大きな方眼紙1枚に書かれた生徒35人分の棒グラフの忘れ物表というものを作り、
教室の後ろの掲示板に貼りだした。
毎日忘れ物がある人に1マス分、赤鉛筆で塗っていく。
あっというまに私の名前の棒グラフが赤く一番上のマスまで
達してしまった。
忘れ物係がいて、忘れ物をしたらその都度グラフに色を
塗っていく。
担任が「コンパスを出しなさい」というと
一斉にクラスの皆が私を見る。
その目は好奇一色で、私が「忘れました」と言うのを
今か今かと待っているようだ。担任がいつコンパスを
持って来なさいと言ったのかさえ知らない。