第1章 起
母は朝起きたことがない。
それでも学校へ遅刻をしないで通えたのは
隣に住んでる優子ちゃんが毎朝8時に家の玄関の前で「みつきちゃん!」と大きな声で呼んでくれるからだ。
その声で私は目を覚まし
ボロ布団から飛び起き、昨日学校から帰ったままのランドセルを
背負い、歯も磨かず、顔も洗わずに出て行く。
洋服はパジャマ兼普段着だ。
不潔とか、みだしなみとか、何も分からなかった。
それを教えてくれる人がいないのだから。
学校の先生は見るからに軽蔑の眼差しを自分に向け、
私のことはいないものとしている。
担任は視力の悪い私を一番後ろの席に座らせ、
黒板の字がまるで分からないのに
完全に無視した。
当然のことながら明日の持ち物や授業の内容をノートに写して
書くことができず、
一人遅れをとり、その度にクラスの皆の前で
叱られた。