第1章 起
「ただいま!」
元気な声で言ってみる。
母はいつものように寝てる。
父は仕事なのかどうなのか知らないがいつもいない。
六畳二間の狭い部屋。
学校から帰るといつもこんな状況だ。これが私の毎日。
部屋は足の踏み場がないほどに散らかっていて
台所は食器の山だ。
台所の足元にはゴキブリ取りが置いてあり、中はもう何年も前から満員だ。
テーブルには昨夜母が一人で飲んでいたビール瓶が転がって中身がこぼれている。
ビール瓶の横には泡のなくなった飲みかけのコップが
無造作に置いてある。
「おやつ」なんて
しゃれたものを探して冷蔵庫を開けてみる。
勿論、ゼリーやプリン、バナナやアイスクリーム、シュークリームなんて
ものは一つもない。何度見ても漬物や野菜のようなものしか
ない。
当然のことながら朝ごはんも用意されていたことは
一度もなく、一日の中でまともにご飯にありつけるのは
学校の給食だけだ。
学校の健康診断ではいつもやせ過ぎとされた。