第1章 起
家にお風呂はない。六畳二間のボロアパートだ。
何日かに一回、近くの銭湯へ行く。
母親が夕方に起きているときに「お風呂に行っておいで」という
だいたい夕方~夜に起きて、朝方に寝ている。
夜、起きているときはずっとテレビを見ているか電話で自分の姉妹と話をしている。
毎日毎日何時間も電話で話している。
何を話しているのか分からないが楽しそうな感じではないことは分かる。
短気で自分に怒るたびに暴力をふるう。
母親の口癖は「女の子なんてほしくなかった」だ。
田舎出身の母親は男の子を生んで評価されるという場所で育ったのでずっとその考えが抜けないのだろう。
私は母親にも嫌われているのだ。
それはテレビドラマの親子や
クラスの子の親子の会話や絵本に出てくる親子や、
動物の愛情表現をみても、明らかに自分が受けたことがない感情表現がそこにあることを知ったからだ。