第1章 起
一人机の墨汁を拭いている間、皆はさっさと授業を始めてしまっている。
机の上が乾いて教科書とノートを出せるようになったのは
次の授業の終わりからだ。
毎週金曜日、給食で着るかっぽう着の洗濯が回ってくる。
班で洗濯順番が決まっているのでだいたい月に一回くらい
の割合で自分に回ってくる。
しかし先々週も先週も今週もかっぽう着の洗濯は私に渡され
る。
「え?」という顔をしても皆知らんぷりだ。
私もそれ以上の事は何も言えない。「え?」という顔をするのが
精一杯の拒否反応だ。
担任が配るプリントはいつも自分のだけぐちゃぐちゃになっている。
前に座っている子が一枚取って自分に渡すとき、残り一枚の
私のプリント用紙をぐちゃっと指で丸めて渡すのだ。