第1章 起
一つ助かったのは視力が悪いため、皆の顔がよく見えなかったことだ。
どんな顔をして自分を見ているか分からない。
このころの記憶は全体に黒がかっていて色が全くい。
夏も冬も晴天の日も雨の日もあったはずなのに色がないのだ。
ある日、学校へ行くと自分の教室がざわついている。一つのところに皆が集まってザワザワしているのだ。
何だろうと近づくとそれは自分の机の辺りだった。どうやら私の机を皆が円を描くように取り囲んでいる。まるでアメに群がるアリたちだ。
私が近づいた途端、その輪はクモの子を散らすように
一斉に机から離れていった。
その瞬間、自分の目の中に入ってきた映像は
真っ黒だった。