第1章 起
オロオロしていると
担任は
「何をしているんだ、早く出ろ!他の皆はコンパスで
円を描きなさい」
と言った。
自分以外の生徒は皆、図工の作業に
取り掛かった。
自分だけぽつんとした。
担任は自分に「早く出ろ」としか
言わない。皆が楽しく円を描き、色を塗り始めたとき
待ってても永遠に「今日はいいから先生のを使え」という言
葉は出てこないと思った瞬間、廊下へ向かって歩いた。
不思議と涙はでない。
もう自分が辛いとか、担任からもクラスの皆からも馬鹿にさ
れて嫌われているとか、考えられなくなっていた。
まともに考えてしまったらきっと生きていけなくなって
しまうほど自分は汚く、劣悪な家庭環境にいたのだ。