第1章 転校生は美少年?
「ん?いいっスよ?誰もいないっスし」
にこりと曇りのない笑顔で言われた。いわゆる、その笑顔は営業スマイルってやつですか?イケメン君よ…
俺は籠に入っていたボールを一つ取り、床に一回ついてみてから、ボールの感触を味わった。
(これだ…)
ダムッ
シュパッ
ボールを床に一回、バウンドさせてから放り、見事、ゴールに入った。久しぶりで入らないと思ったがそうでもないらしい。
「氷童っちも出来るんスか?バスケ」
「まあまあ…かな」
自分の後ろで同じくシュートをしていた黄瀬が肩越しに聞いてきた。
「俺…皆と違ってまだまだ力不足なんスよ…」
「…?そうは見えないが?」
いきなり、深刻そうな会話を切り出してきた黄瀬。
「俺には黄瀬は頑張ってるんだなってのは伝わってくる」
「本当っスか?!」
「あぁ、皆より劣ってるとは思わないな」
「氷童っちにそう言われるとそんな気がするっスよ…」
「そりゃどうも」
少し元気を出した黄瀬に安堵の笑みを溢す。今日、1日でどれだけ笑みを溢しただろう?確かに言えることは前より笑う事が多くなった気がする。
「氷童っちは好きな子とかいないんスか?」
「な!なんだよ、いきなり」
唐突に変な話題を振られてボールを取り落としそうになる。
「まあ、氷童っちは女の子にモテモテ過ぎてそんな事、考える余裕ないっスか…」