第5章 クリスマスデート
「椿っち、行きたい所があるんスよ」
「ん?何処だ?」
「こっちっス」
俺の手を引いて誘導する黄瀬。ふと回りを見てみる。クリスマスイブだからか、カップルが大勢いる。
(俺達もカップルに…見えるんだろうか…?)
黄瀬は何やらニコニコしたまま何処に行くか教えてくれない。色んな店がある道路を歩いて行くと黄瀬はある一見の店に入った。
(ここって…)
入ったのは何故か宝石店。
(なんか盗むとかしないよな?)
そんなバカげた想像をしながら黄瀬に聞く。
「黄瀬、何がしたいんだ?」
「2人してペアリングを買おうと思ったんスよ」
「ペアリング?!」
《黄瀬side》
椿っちが凄く驚いた声をあげた。その顔にはほんのすこし、照れが隠れている気がした。
「どれがいいっスか?」
「え?えーっと…」
椿っちはショーウィンドウに飾られたさまざまなリングを見つめて選び始めた。俺はその横で椿っちの横顔を眺める。転校初日とは明らかに違う顔立ちをしていた。美丈夫だと思われがちだった彼女は今、とても綺麗な顔立ちをしている。
(やっぱり、椿っちが大好きっスよ)
改めてそう認識した。
「んー…これがいいな」
「どれっスか?」
椿っちが指を差したのは白金で出来たシンプルなリングだった。だが、椿っちは浮かない顔をしている。
「どうしたんスか?」