第5章 クリスマスデート
「まさか、これを着ていけと?」
「そうよ!これで黄瀬君もイチコロよ!」
「あのなあ…」
呆れながら、渡された服を眺める。薄い黄色のロングスカートに首周りが広く開いた白いレースのついたシャツにジーンズ生地のジャケット。
「女の子なんだからこれくらいのお洒落しなさい!髪は下ろす!」
「え?痛い痛い!」
無理矢理、結んでいた髪を下ろされ、とかされる。その後、渋々、母さんから渡された服を着る。
「うわあ…足がスースーする」
「男の子みたいな台詞言わないの!毎日、制服でスカート履いてるでしょ?」
「学校の制服は別だって」
「靴まで用意したからそれを履いて行くのよ!」
「なに?靴まであんの?」
「当たり前でしょー!さっ、いってらっしゃい」
歩きにくいヒールの高いブーツを履いて家を出る。一歩一歩を慎重に歩いて行くのは神経が殺られそうで苦労する。
(女の子って…こんなヒールの高い靴とか履くのか…?凄いなあ)
なんとも男子みたいな台詞を言ってしまう。なんせ、今までこんな女の子みたいな可愛い服を着た事がないわけだから、汚さないか心配だ。
「うわ…遅刻しそうじゃんか…」
携帯の画面を見てげんなりと呟く。待ち合わせ時間に遅刻するなど、前代未聞だ。苦労し、到着したのは集合時間を10分過ぎた頃だった。