第3章 バンドコンテスト
曲決めが最終的に終わらず、今日は何も決まらず解散することに…
「うわ…暗いなあ…寒いし」
大分、曲決めに励んでいたらしく辺りは暗くなっていた。
「黄瀬の野郎…先に帰るぞ…」
体育館を見れば、まだ電気がついており、練習しているのだと思う。それか誰か自主練でもしているのだろう。
(仕方ない…俺が迎えに行くか)
そうでもしないといつまでも練習してそうだからな…体育館に脚を向けて早足になりながら、体育館の出入り口から入ろうとした時だった…
「っ!?」
黄瀬が誰かと一緒にいた。俺はとっさに影に隠れてこっそりと中を覗く。再確認…黄瀬と多分、同じ学年の女子だろう…何やら話しているようだが、内容まで聞き取れない。
(なにやってんだ?)
しばらく、興味津々と言った感じで覗いていたが…その女子がいきなり、黄瀬に抱き付いた。黄瀬は少し驚いたようだったが、躊躇いがちに抱き締めた。
(え…?)
ズキッ…
不意に胸の奥が針で刺されたような痛みが走った。あ…やっぱり…信じちゃダメだ…黄瀬もやっぱり…俺を…
"玩んでいたのか…バスケットボールのように…"
俺は壁に背を預けてズルズルと力なく崩れ落ちた。そして声を殺して静かに涙を流した。体育座りで踞り、全てを忘れようと首を振る。胸が締め付けられるように痛い…信じていいと思っていた俺は…大バカだ…叫びたい…声を出して泣きたい…誰かの胸で声が枯れるまで泣きたい…
(黄瀬の…バカ…)
心の中で悪態をついた。すると足音がこちら、出入り口に近づいてきたのに気がついた。だが、動けなかった…俺に気付かなければいい…そんな願いも儚く消え、足音は俺の隣で止まった。
(何も聞きたくない…)