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女の私の憂鬱 《黄瀬涼太》

第3章 バンドコンテスト


「ズルくないっスよ!椿っちは俺が落とすって決めたんスから!」

「…氷童も大変な奴に好かれたな」

バンドメンバーの中で一番背が高い男子生徒が俺を可哀想な哀れんでいるような目で見てくる。

「そうなんだよな…」

「なんでそんな事言うんスか!!」

「冗談だ」

「冗談に聞こえないっス」

「あのーそろそろ、皆の自己紹介とかしていい?」

後からきた塚田が少し申し訳なさそうにおずおずと聞いてきた。

「悪いな、お願いする」

「こほん、えーじゃあ…」

塚田はわざとらしい咳払いをしてから順番にバンドのメンバーを紹介した。

「右から一番小柄な奴が隅田光だ」

「宜しくね~」

隅田は元気に挨拶する。

「んで、一番背が高いのが篠原雄二」

「どうも」

篠原と呼ばれた男子生徒は軽く会釈をした。

「最後の一番口が悪いのが佐藤雅樹」

「なんだよ!口が悪いって!まあ、宜しく」

突っ込んだが、ちゃんと礼儀正しいらしい。

「あぁ、改めて宜しく頼む」

俺も習ってお辞儀をする。すると黄瀬がいきなり手を上げて発言してきた。

「ちょっといいっスか?」

「どうしたんだ?黄瀬?」

篠原が不思議そうに聞き返した。

「椿っちに触るのは禁止っス!」

「はあ?」

驚いたのはバンドメンバーではなく俺だった。

「なんでだよ?」

「俺のっスから」

「俺はお前のものか!?」

「えー!じゃあ、ハイタッチもダメなの!?」

「ダメっス!」

不満そうに隅田が頬を膨らませる。

「じゃあ、円陣も?」

篠原が試しに聞いてみた。

「ダメっス!」

「ダメだこりゃ…」
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