第1章 転校生は美少年?
まもなく授業が始まるので黄瀬との会話を中断し、貰った教科書を出し、持参したノートと合わせて机に出す。
今日の1時限目は国語で担当はあの関西弁で喋る教師だった。
「この漢字、読める奴いるかー?」
教師は黒板に『上総』の文字を書いた。クラスの生徒達はしきりにあーでもない、こーでもないと首を傾げる。
「…かずさ…じゃないですか?」
俺はぽそりと他人事の様に答えた。それが聞こえたのか教師はにこやかに微笑み漢字の横に俺の言ったかずさの三文字を書き出した。
「良くわかったなー何処で知ったんや?」
「小説読んでたら、そんな名前の人物が出てきてたんで」
「そうかー…なら、これはどうだ?」
面白そうに教師はまた、黒板に漢字を書き出した。今度は『帳』と言う昔の読み方をする漢字。
「とばり…」
「正解や!なんや、氷童は国語出来んか?」
「まあまあ」
これじゃあ、俺と教師だけのやり取りじゃねーか…女子達は微笑ましく俺を見んな!!黄瀬も黄瀬でなんかめちゃくちゃ感心した眼差しで俺を見てくるし…
こんな形で多少の学力を見せた俺。授業はすんなり終わり、気が付けばお昼休みに入っていた。
「氷童っち!」
「氷童っち!!?何ソレ!?たまごっちみたいな呼び方!」
「俺は自分が認めた人に〇〇っちって付けるんスよ」
「付けなくていい…俺の何処を認めたんだよ」
「んー…なんとなく」
「具体的な理由はないのかよ」
「それより!一緒にお昼食わないっスか?バスケ部の皆と」
それよりってなんだよ、と突っ込むのはさておき…食事に誘われたぞ?どうする…これは誘いに乗るべきか?それとも断るべきか?机に置いた弁当箱を見て考える…がそれより早く黄瀬が動いた。
「考えてないで行くっスよ!遅れたら、赤司っちに前髪1㎝切り落とされるんスから~」
「誰なんだよ…そんな恐ろしい事する奴」
「それを氷童っちが言うっスか?」
早く!と弁当箱も持たれ、ついでに腕も捕まれて半ば強引に引っ張られながら向かった先は屋上だった。
「お待たせっス!」
「遅いよーきーちゃん!」