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女の私の憂鬱 《黄瀬涼太》

第1章 転校生は美少年?


ニコニコと喋る黄瀬涼太と名乗るモデル君。まあ、悪い奴じゃないんだろうが…

「それにしても…氷童さんは何でそんなに美丈夫なんスか?」

来ました、その質問!俺はそっぽを見ながら、ボソリと言う。

「…父親の遺伝…」

「ぶっ…くくくっ…遺伝って…ははっ、そんなに似るものっスか!?」

「おいっ…これ以上笑ったら、お前のその顔を一生、表で歩けない様にしてやんぞ?」

「はい…すいません」

睨みを効かせて、どす黒いオーラを出しながら、恐ろしい事を口にすると黄瀬は静かに笑いを納めた。

(なんだ、案外簡単な奴だな)

「…できれば、母親似が良かったんだがな…」

「君のお母さんは綺麗なんスか?」

「まあな…少なくとも、モデルは出来る顔と体型だと思うが?」

「ふーん…体型はお母さん似?」

「何処見てる変態」

黄瀬の顔に思い切り、パンチを食らわす。さっきからこいつの視線が肩か胸に世話なく動いていたのはそう言う事か。いてて、と顔を優しく擦る黄瀬。

「俺、モデルなんスけど?」

「今、知った」

「いやいや!!その前から知ってたっスよね!?」

慌てて突っ込みを入れる黄瀬。

(久しぶりだな…こんな楽しいのは)

自然に笑みが溢れていたのか、黄瀬が急にニヤリと笑った。

「笑ったっスね?今」

「は?笑ってない」

「笑ったっスよー」

「笑ってない!!」

そんな下らない会話は久々で、なんだかこいつといるのが心地好いとさえ思った。この気持ちがいつしか恋に結び付くとは知らずに…

「見て、氷童さんがさっき笑ったわ」

「黄瀬君と喋ってる図、絵になるわー」

女子達の噂など耳に入る事もなかった。
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