第4章 見えない壁。
黙り込んでいる私に、
美風さんは淡々と話し始める。
「当初、僕に感情ってものはなかった。その概念とかは最初から埋め込まれてたから、僕はその通りの表情を作り出してきた。空っぽの感情しかなかった。」
私は空を見つめたまま
その話しに耳を傾ける。
「でも、僕は君と関わるうちに少しずつだけど、感情ってものを理解し、手に入れた。…でもね、僕にはまだ複雑すぎて…エラーが出てしまっているんだって博士が言ってた。」
「エラー…?」
私は美風さんをじっと見つめ返す。
「体にこの間のような不調が起こるんだ。」
私は先日あった事をふっと思い出す。
「柚子。僕はおそらく、人間の感情で言う"好き"という感情を君にたいしてもっている。」
美風さんは柔らかく笑った。
「これは確かに僕の意思。僕の心なんだ。…これから言うのは僕のわがままかもしれない…だから…無理だったら…聞いてくれなくていいだ。」
そういうと美風さんはすぅっと深呼吸をした。
「僕と…これからも…一緒に居てほしいんだ。」
心に空いた穴が
一気にふさがるような
そんな気持ちだった。
美風藍はロボットで、
感情なんてなかった…。
でも、
私と関わるうちに、
感情を少しだけど手にいれて、
私を好きになってくれた。
どうして、疑ってしまったのだろう。
どうして、不安になんてなってしまったんだろう。
私は美風藍を抱きしめた。
強く強く。
離してしまわないように。