第4章 見えない壁。
美風さんに連れられて来たのは
近所の小さな川原だった。
そこには夜だと言うのに
人がちらほらと座っていた。
「穴場だと思ったんだけど…思ったより居たね。」
美風さんは溜息をつきながら、
私の手を引くと、川原に腰掛けた。
「あの…?」
「あと9秒。空、見てて。」
私は言われるがまま
空を見上げる。
都会の空に星はなくて、
うすら明るい空が私達を見下ろす。
"ヒュー…ドーン"
その何も無かった紺色の空に
赤や黄色や緑の花が咲く。
「あ。花火…きれいですね。」
「うん。ここがよく見えるってネットに書いてあった。」
花火の光に照らされた美風さんの横顔は
花火に負けないぐらいキレイで。
ドキドキとしてしまった。
再び空に目を戻す。
空に咲いた大きな花が
落ちてくるんじゃないかってぐらい
間近で広がる。