第4章 見えない壁。
それから、
私は来栖さんに送ってもらって
アパートに帰った。
来栖さんは
「ごめん。」とずっと謝っていた。
よくわからなかった。
何に謝っているのか…
誰に謝っているのか…。
そんな事よりもずっと
私の頭の中は美風藍でいっぱいだった。
結局その日は眠れず、
泣き腫らした目を氷で冷やすと、
現場へ向かった。
美風藍は体調不良のため
一週間お休み…という事だった。
そのため、美風藍の出演しないシーンのみの
撮影を続けた。
ふと、現場で七海春歌を発見した。
私は、彼女に美風さんについて尋ねた。
彼女は笑顔で
「元気みたいです。でも、もう少しお休みが必要みたいです。」
と答えてくれた。
私はほっと安心をした。
それと同時に胸がザクリと痛んだ。
私は知らなくて、
彼女は知っている。
私の知らない美風藍を
彼女は知っている…。
見えない壁のようなものを
強く強く…
感じた。