第1章 正反対な二人
『ふぅぅ~…疲れた~!』
と背中を伸ばしていると
稲葉さんが後ろから頭を叩いてくる。
『ちょっ…びっくりした~…』
「ばーか…お前がボーッとしすぎなの」
こちらの髭を生やした稲葉さんは
あたしの先輩でもあり
6歳の女の子のパパでもある37歳
怒るとめちゃくちゃ怖くて、
でも娘の話はデレデレで…
あたしが尊敬してる人。
『何かやっぱりいいですわ。
この仕事…やっててよかった。』
「だろ?
にしても、
お前がドームを仕切るなんて…
生きてると良いことあんのな?」
『何ですか…それ…』
「あ、西村に気合い入れとけよ?
それもお前の仕事だかんな?」
そう言って、あたしの頭を
ポンポンと叩いて稲葉さんは
歩いていった。