第32章 大切な人
大輝くんを呼び止めようとした瞬間
携帯のメール音が鳴り出した。
“二宮さん”
『どうしたんだろう…』
二宮さんがメールなんて
珍しいけど…
『……え…嘘…』
メールの内容を見た瞬間
持ってた伝票を落としそうになった。
本文―――
相葉さんが行方不明
その絵文字も何もない箇条書きに
あたしはリアルさを感じた。
ゆ…行方不明…?
「どうした?」
追ってこないあたしに驚いたのか
大輝くんがあたしの方へ戻ってきた。
『相葉さんが行方不明って…』
「は?行方不明…?」
もしかして閉じ込められたとか?
行方不明って…意味わかんないし…
警察沙汰だったりする?
あたしの手はいつのまにか
さっきとは違う震えが始まっていた。
「お前の大切な人だろ?
ここは良いから!
早く行ってこいよ!!」
その大輝くんの言葉にハッとなった。
そうだよ。
あたしにとって大切な人だから…
そう思ったときには、
もう体は動いていて店内を出て走っていた。