第7章 隠した本音
最近、相楽さんが神谷道場に毎日来る
緋村さんとの決闘から、彼は雰囲気が変わった
以前より少し丸くなったような気がする
「まじい」
この日も相楽さんはただ飯食べに神谷道場にやってきた
お昼ご飯を作ったのは薫さんで、焼き魚を食べた一言がこれだった
「ダメだぜ嬢ちゃん。ちゃんと料理の修行もしとかねぇと。真愛を見習え。なんなら俺が教えてやろうか」
悪気はないんだと思う
「毎日こうじゃお前もつれえだろ、剣心」
「そうでもござらんよ。薫殿の料理は食べる毎に味を増すいい料理でござるよ」
「ふーん。一種の“珍味”みてーなモンか」
もう一度言うけど、2人とも悪気はないんだと思う
それに薫さんの料理の腕は当初に比べれば確実に上がってる
おいしいものを作りたいって言って私のところに来たときは驚いた
きっと緋村さんのためなんだろうなって思う
彼女は否定しているけれど、たぶん緋村さんのことが好きなんだろう
好きな人の為に一生懸命になる人ってかわいいよね
「お取込み中申し訳ございません。緋村さんは御在宅でしょうか」
振り向けばいつかの署長さんがいた
今回彼がここに赴いたのは、緋村さんにお願いがあるらしく
そのお願いというのは、ある兇賊を倒してほしい、というものだった
「兇賊?」
相楽さんが訪ね、署長さんが答える
その兇賊というのは、通称“黒笠”と言われ
現在、政・財・官界で活躍する元・維新志士を狙い斬奸状を送りつけて斬り殺す殺人鬼らしい
この十年、日本全国に出没して兇行うを繰り返す事、数十回
一度も仕損じたことのない凄腕の剣客だと署長さんは言う
「二ヵ月前、ヤツが静岡に現れた時は当人、警官、護衛合わせて、34人が殺され、56人が重傷を負わされました」
「ちょっと待って下さい。相手が凄腕とわかってるんだから、拳銃警官だってその時配置された筈でしょう。それなのに、何で、そんな大被害に…」
薫さんの言葉に署長さんは答えるが、
湯呑を持つ彼の手が震えている
それくらいすごい相手なんだってわかる