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隻眼男と白兎

第27章 猫耳は正義



『高杉さん!この後のご予定は?』

私達は高杉さんの先生の御墓参りを終えて、再び江戸の町の賑わいの中を歩いている。

『特に用がないなら、最近新しく出来た評判の甘味処にお茶しに行きませんか⁉︎』

お茶というのはただの口実で、本当はただデートしたいだけなんだけどね!

私がワクワクと見つめる中、高杉さんはうーんと考える仕草をして、

「…用がある」

『ええええ!!そんなぁ!!』

見事にフラれたショックに私が項垂れると、高杉さんはそれを横目で見て溜息を吐いて、

「夕方には終わる。…それまで時間潰して待ってろ」

思いがけない言葉と共に高杉さんの手がポンと私の頭に乗せられた。

『⁉︎高杉さん⁉︎
どうしたんですか⁉︎いつもより優しくないですか⁉︎
熱でもあるんですか⁉︎頭でも打ちましたか⁉︎って、いだいいだいいだい!!!』

せっかく人が心配してるってのに高杉さんは思いっきり私の頭を鷲掴みにする。

あー、やっぱりいつも通り優しくなかった(涙)。


ひとしきり私がギャーギャーと喚き散らす姿を楽しむと、高杉さんは菅笠を深く被り直し、私に一声だけかけて人混みの中へと消えていく。

それを見送ってから、私も高杉さんとは逆の方向へと当てもなく歩き始めた。



高杉さんと別れて早30分。

私は未だにフラフラと江戸の町を歩いている。

『時間潰しとけって言ってもなー』

何時の間にか人気の無い路地裏に迷い込んだ私はぶつくさと独り言を呟く。

「ニャー」

『そう、何にもすることないんだにゃー』

『………⁉︎』


いつの間にいたのか、目の前には小さな黒白猫がつぶらな瞳で私を見上げていた。

くりくりとした丸いお目目。
多少薄汚れてはいるが、抱き心地の良さそうなフワフワした毛並みに私は、


私は………!!


『にゃんこー!!!』


目を輝かせて飛びついた。


何を隠そう、私は


大の猫好きなのである。


しかしそんな私の腕にモフモフにゃんこが収まる訳もなく、

『あべしっ!』

私の愛は受け入れられる事なく軽々と避けられた。


うぅ…痛い……。


虚しくも地面へとダイブした私が涙目で起き上がると、

「ニャー」

少し先の方で、まるで付いて来いと言ってるかのように私を振り返って鳴いていた。
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