第3章 夢じゃないし夢じゃなかった!
また子ちゃん友達攻略を無事終え、また子ちゃんが寝てしまった中、私は一人で甲板に来ていた。
今日一日であまりにも多くの事がありすぎて寝つけない。
ふと夜空を仰ぎ見ると
この世界だからなのか
飛んでいる船の上にいるからか
月がとても大きく感じられる。
海面に月が映り波がキラキラと輝いていてなんとも幻想的な風景を作り出していた。
こんな綺麗な夜にはあれだ!
私はキョロキョロと辺りを見渡して誰もいないことを確認する。
息を大きく吸い込んで
歌い出す。
現世にいた時から私は何かとすぐ歌い出すクセがある。
一曲じゃ歌い終わり、続けてもう一曲歌おうとして、近づく足音に気付いた。
とっさに口を結ぶ。
『あ…』
高杉さんだ。
「お前ェこんな夜中に何やってる?」
ほっ。良かった。
聞かれてなかったみたいだ。
『ちょっと眠れないんでお散歩です』
高杉さんは私の隣に腰掛け煙管を吸い出した。
チラッと横目で高杉さんを見る。
高杉さんの端整な横顔。
手に持つ煙管が月の光に照らされて輝いている。
『綺麗だなぁ』
ポツリ、と思った言葉が口から出てしまっていた。
しまったと思った時にはもう遅い。
しっかりお耳に届いた高杉さんが私を見た。
そして少し考える素振りをして
「コレ使ってみるか?」
渡されたのは高杉さん愛用の煙管。
ファッ⁉︎
な、なななななんて恐れ多い!
是非使わせていただきます!!←
『ありがたく一口いただきます!!』
口を付け深く吸い込「さっき聴いちまった礼だ」
ブフォアッ!!
き…
聴いていらっしゃったーーー!!!
私の顔は今最高潮に真っ赤だろう。
折角の初高杉さん煙管を味わうでもなく盛大に咳き込んでしまった。
『うぉっ!げふぉっ!!あ、ありがとうげほっました』
全然吸えなかったけど高杉さんの手に煙管を返す。
高杉さんはなんだかすごく優しい目をして笑っていた気がした。
「また歌え」
それだけ言って部屋の方に戻る高杉さん。
高杉さんはクールな人だけど、
本当は優しい人なんじゃないかって思う。
まだまだ知らない事ばかりだ。
私はそんな高杉さんに何かしてあげられるのかな。
こうして私の長い長い夢は始まったのでした。