第11章 海に生きるライオン(黒尾鉄朗)
柔らかい身体に手を回して、無理矢理傾かせて彼女の額に口付ける。痛い、という申告があるが気にしない。そのまま眉間、左のまぶた、耳たぶ、右の頬へと順番にキスをしていく。
口の端にキスをした時、彼女から鼻にかかったような甘い声が漏れた。肩に置かれていた手がぎゅっとシャツを握りしめる。唇にキスして欲しいんだろうなぁ、と考えながら、わざとそこはお預けにして、はずした場所にキスをしていく。
「クロ…っ」
なまえが縋りつくように声を絞った。もどかしいんだろう。俺もすごくもどかしいよ。でもごめんな。すごく愉しい。
「キスしかしてねぇけど?」
そういってニヤリと笑ってみせると、なまえは「意地悪」とだけ返した。
ブラウスの中に手を突っ込んで、肌から僅かに指を浮かせて背中をなぞる。なまえの身体が跳ねて背中を仰け反らせた。
白い首筋が目の前にきたので、素直に噛み付いて舌でなぞると、我慢できなくなったのか俺にしがみついてこようとする。
それを右手で押し返して、無理矢理体勢を元に戻させた。
柔らかい臀部が下半身を鈍く刺激するので、自分でも息が荒くなっていくのがわかる。
もう一度首筋にキスをした。顎の下、うなじの横、鎖骨、どんどん下へと降りていき、ブラウスのボタンに手をかけたとき、俺の手首をなまえの右手が掴んだ。